相撲部屋
相撲の「部屋(へや)」は、単なる練習場ではなく、力士の生活・育成・所属をすべて含む組織単位です。歴史的にも制度的にも相撲の根幹をなす仕組みで、江戸時代から現在まで形を変えながら続いています。主なポイントをまとめます。
1.相撲部屋の基本的な意義
力士の所属組織
すべての力士は必ずどこかの部屋に所属し、個人で活動することはできません。
生活共同体
若い力士は基本的に部屋で共同生活を行います。食事(ちゃんこ)、掃除、稽古などを一体で行います。
教育機関
稽古だけでなく礼儀・生活習慣も指導します。
兄弟子・弟弟子の上下関係が強いです。
運営単位
日本相撲協会の大会参加や力士管理は部屋単位です。
新弟子の募集も部屋が行います。
2.部屋制度の起源
江戸時代、相撲は勧進相撲として興行化しました。
当時は力士をまとめる 親方とその配下の 力士集団という形で組織され、これが現在の部屋の原型です。
この頃には、親方=元力士、力士は親方の弟子という関係がすでにありました。
3.年寄名跡と部屋
部屋を運営できるのは 年寄(親方)だけです。
年寄になるには日本相撲協会の 年寄名跡(株)を持つ必要があります。
特徴:
- 名跡は 105前後しかない
- 元関取しか取得できない
- 名跡を継承・借用して親方になる
そのため部屋の数もこの枠の中で決まります。
4.江戸〜明治期の部屋
この時代は現在ほど固定的ではありませんでした。
特徴
- 力士の移籍が比較的自由
- 親方の交代で組織が変わる
- 地域的な結びつきが強い
また、伊勢ヶ濱系、出羽海系などの流派が形成されました。
5.一門の形成
明治〜大正期になると、部屋は一門(グループ)を作ります。
主な一門
- 出羽海一門
- 二所ノ関一門
- 時津風一門
- 伊勢ヶ濱一門
- 高砂一門
一門の役割には合同稽古、協会内の政治、親方の人事などがあります。
6.近代の部屋制度
戦後の日本相撲協会で制度が整理されました。
主なルール
- 力士は 原則移籍できない
- 新弟子は 部屋がスカウト
- 親方が部屋を運営
また、部屋の新設、部屋の継承、部屋の消滅が頻繁に起きるようになります。
7.部屋の継承
部屋は以下の形で継承されます。
① 直弟子が継ぐ
最も一般的な継承方法です。
例:弟子 → 親方引退 → 部屋継承
② 別の親方が継ぐ
後継者がいない場合、同じ一門の親方に任せることもあるようです。
③ 閉鎖
部屋は消滅し、力士は他部屋へ移籍となります。
8.部屋数の変化
時代ごとの大まかな数
| 時代 | 部屋数 |
| 江戸後期 | 約20 |
| 明治 | 約30 |
| 戦前 | 約40 |
| 1980年代 | 約50 |
| 現在 | 約45前後 |
少子化や人材不足で近年はやや減少傾向です。
9.部屋制度の特徴
他のスポーツと違う特徴があります。
終身所属
力士は基本的に 引退まで同じ部屋
家族的構造
親方=父
兄弟子=兄
弟弟子=弟
のような関係が構築され、上は下の者の面倒をみます。
生活指導
食事、礼儀、稽古、生活とすべて部屋内で完結します。
10.現代の課題
近年は部屋制度にいくつかの問題も指摘されています。
- 力士数の減少
- 部屋運営の負担
- 体罰問題
- 親方の後継不足
そのため合同稽古の増加、部屋統合なども進んでいます。
参考:現在の相撲部屋と所属者数一覧
| 部屋 | 師匠 | 元四股名 | 親方数 | 力士数 | 行司数 | 呼出数 | 床山数 |
| 立浪部屋 | 立浪 耐治(たつなみ) | 小結 旭豊(あさひゆたか) | 1 | 16 | 1 | 1 | 1 |
| 荒汐部屋 | 荒汐 栄吉(あらしお) | 前頭二枚目 蒼国来(そうこくらい) | 2 | 15 | 1 | 0 | 2 |
| 錦戸部屋 | 錦戸 眞幸(にしきど) | 関脇 水戸泉(みといずみ) | 2 | 3 | 1 | 1 | 0 |
| 境川部屋 | 境川 豪章(さかいがわ) | 小結 両国(りょうごく) | 5 | 23 | 0 | 1 | 2 |
| 大嶽部屋 | 大嶽 大輔(おおたけ) | 前頭九枚目 玉飛鳥(たまあすか) | 2 | 9 | 0 | 2 | 1 |
| 錣山部屋 | 錣山 矩幸(しころやま) | 小結 豊真将(ほうましょう) | 1 | 11 | 1 | 1 | 0 |
| 尾上部屋 | 尾上 圭志(おのえ) | 小結 濱ノ嶋(はまのしま) | 2 | 13 | 0 | 0 | 0 |
| 藤島部屋 | 藤島 武人(ふじしま) | 大関 武双山(むそうやま) | 5 | 13 | 0 | 0 | 1 |
| 浅香山部屋 | 浅香山 博之(あさかやま) | 大関 魁皇(かいおう) | 2 | 11 | 0 | 1 | 1 |
| 山響部屋 | 山響 謙司(やまひびき) | 前頭筆頭 巌雄(がんゆう) | 2 | 13 | 1 | 3 | 0 |
| 西岩部屋 | 西岩 忍(にしいわ) | 関脇 若の里(わかのさと) | 1 | 8 | 1 | 2 | 0 |
| 雷部屋 | 雷 徹(いかづち) | 小結 垣添(かきぞえ) | 2 | 9 | 1 | 0 | 1 |
| 音羽山部屋 | 音羽山 力三郎(おとわやま) | 横綱 鶴竜(かくりゅう) | 2 | 10 | 1 | 1 | 1 |
| 秀ノ山部屋 | 秀ノ山 和弘(ひでのやま) | 大関 琴奨菊(ことしょうぎく) | 1 | 6 | 0 | 0 | 0 |
| 湊川部屋 | 湊川 貴信(みなとがわ) | 大関 貴景勝(たかけいしょう) | 2 | 8 | 0 | 0 | 1 |
| 時津風部屋 | 時津風 祐哉(ときつかぜ) | 前頭筆頭 土佐豊(とさゆたか) | 3 | 16 | 1 | 1 | 1 |
| 伊勢ノ海部屋 | 伊勢ノ海 準人(いせのうみ) | 前頭三枚目 北勝鬨(きたかちどき) | 5 | 12 | 1 | 0 | 2 |
| 湊部屋 | 湊 孝行(みなと) | 前頭二枚目 湊富士(みなとふじ) | 1 | 9 | 1 | 0 | 1 |
| 式秀部屋 | 式守 秀五郎(しきひで) | 前頭九枚目 北桜(きたざくら) | 1 | 10 | 1 | 0 | 1 |
| 高砂部屋 | 高砂 浦五郎(たかさご) | 関脇 朝赤龍(あさせきりゅう) | 2 | 26 | 2 | 2 | 0 |
| 九重部屋 | 九重 龍二(ここのえ) | 大関 千代大海(ちよたいかい) | 4 | 21 | 3 | 3 | 2 |
| 高田川部屋 | 高田川 勝巳(たかだがわ) | 関脇 安芸乃島(あきのしま) | 2 | 19 | 2 | 0 | 1 |
| 中村部屋 | 中村 雅継(なかむら) | 関脇 嘉風(よしかぜ) | 1 | 10 | 0 | 1 | 1 |
| 八角部屋 | 八角 信芳(はっかく) | 横綱 北勝海(ほくとうみ) | 5 | 10 | 2 | 1 | 2 |
| 佐渡ヶ嶽部屋 | 佐渡ヶ嶽 満宗(さどがたけ) | 関脇 琴ノ若(ことのわか) | 6 | 14 | 1 | 2 | 2 |
| 二子山部屋 | 二子山 雅高(ふたごやま) | 大関 雅山(みやびやま) | 1 | 18 | 0 | 0 | 0 |
| 押尾川部屋 | 押尾川 旭(おしおがわ) | 関脇 豪風(たけかぜ) | 1 | 12 | 0 | 0 | 1 |
| 伊勢ヶ濱部屋 | 伊勢ヶ濱 春雄(いせがはま) | 横綱 照ノ富士(てるのふじ) | 5 | 31 | 2 | 4 | 3 |
| 放駒部屋 | 放駒 新(はなれごま) | 関脇 玉乃島(たまのしま) | 2 | 10 | 2 | 2 | 1 |
| 二所ノ関部屋 | 二所ノ関 寛(にしょのせき) | 横綱 稀勢の里(きせのさと) | 1 | 21 | 1 | 0 | 0 |
| 鳴戸部屋 | 鳴戸 勝紀(なると) | 大関 琴欧洲(ことおうしゅう) | 1 | 13 | 1 | 1 | 1 |
| 片男波部屋 | 片男波 良二(かたおなみ) | 関脇 玉春日(たまかすが) | 1 | 3 | 0 | 1 | 1 |
| 朝日山部屋 | 朝日山 宗功(あさひやま) | 関脇 琴錦(ことにしき) | 1 | 5 | 1 | 1 | 0 |
| 阿武松部屋 | 阿武松 健二(おうのまつ) | 前頭八枚目 大道(だいどう) | 2 | 13 | 0 | 1 | 2 |
| 武蔵川部屋 | 武蔵川 光偉(むさしがわ) | 横綱 武蔵丸(むさしまる) | 1 | 14 | 1 | 0 | 1 |
| 春日野部屋 | 春日野 清隆(かすがの) | 関脇 栃乃和歌(とちのわか) | 7 | 16 | 3 | 0 | 1 |
| 玉ノ井部屋 | 玉ノ井 太祐(たまのい) | 大関 栃東(とちあずま) | 1 | 23 | 2 | 2 | 1 |
| 出羽海部屋 | 出羽海 昭和(でわのうみ) | 前頭二枚目 小城乃花(おぎのはな) | 3 | 17 | 1 | 1 | 1 |
| 大島部屋 | 大島 勝(おおしま) | 関脇 旭天鵬(きょくてんほう) | 2 | 10 | 3 | 3 | 1 |
| 追手風部屋 | 追手風 直樹(おいてかぜ) | 前頭二枚目 大翔山(だいしょうやま) | 5 | 21 | 1 | 0 | 2 |
| 武隈部屋 | 武隈 豪太郎(たけくま) | 大関 豪栄道(ごうえいどう) | 1 | 12 | 0 | 1 | 0 |
| 芝田山部屋 | 芝田山 康(しばたやま) | 横綱 大乃国(おおのくに) | 2 | 6 | 1 | 2 | 1 |
| 田子ノ浦部屋 | 田子ノ浦 伸一(たごのうら) | 前頭八枚目 隆の鶴(たかのつる) | 1 | 15 | 2 | 1 | 1 |
| 木瀬部屋 | 木村 瀬平(きせ) | 前頭筆頭 肥後ノ海(ひごのうみ) | 4 | 19 | 0 | 1 | 2 |
| 安治川部屋 | 安治川 竜児(あじがわ) | 関脇 安美錦(あみにしき) | 1 | 8 | 0 | 0 | 0 |